臼歯部の顎骨には下歯槽神経が通っており、下顎の第4および第5歯の付近には頤神経が下唇に向かって走行しています。
頤神経(いしんけい)は三叉神経の第三枝である下顎神経の末梢神経の一つで、主に下顎の感覚を司ります。頤神経は下顎部、下唇、口腔内の粘膜などの感覚情報を脳に伝達します。
下顎の臼歯部にインプラントを埋め込むことは、下歯槽神経という重要な神経が骨の中を通っているため、非常に難しい場合があります。この神経は下顎の感覚を伝え、歯や唇、顎の一部に痛みや触覚などの感覚を伝える重要な役割を担っています。
インプラント手術の際に下歯槽神経を損傷すると、顎や唇にしびれや痛み、感覚の麻痺が生じる可能性があります。これは患者にとって非常に不快であり、場合によっては長期間続くこともあるため、特に注意が必要です。
インプラントを安全に埋め込むためには、まずこの神経の位置を正確に把握する必要があります。CTスキャンなどの画像診断を使用して、神経の走行や骨の状態を詳細に調べます。その情報を基に、神経を避けるようにインプラントの位置や角度を慎重に計画します。
さらに、下顎の骨の高さや厚さも重要な要素です。骨が十分にない場合、インプラントの固定が難しくなるため、神経に接近することによる違和感が生じることもあります。これは手術の難易度を上げる要因となります。