歯のケアと最新治療がわかる本 はじめに

投稿者: | 2010年5月7日

はじめに
健康で美しい歯を手に入れるために
 一生むし歯のないきれいな歯で、おいしいものを食べたいというのは、だれしもがもつ共通の願いでしょう。しかし、みなさんの多くが、むし歯や口腔の病気で悩んでいるのではないかと思います。それはなぜでしょうか。歯は、私たちの健康を左右する大切な器官です。まずは、歯を守るために何か必要なのかを考えてみましょう。
 むし歯の原因は細菌。口の中には健康な状態でも300種類を超える細菌が存在しています。この細菌の中にはむし歯をつくるだけでなく、歯を支える骨を破壊して歯周病を招くものがあります。また、この細菌が血液中に入り込むと、肺炎や心臓病、皮膚病、糖尿病などの病気の原因となり、命にかかわるような病気を呼ぶこともあるのです。 
 むし歯の原因となる細菌の数を完全に無くすことはできません。でも、できるだけ減らすことはできます。上の写真は、私の歯のレントゲン写真です。むし歯は1本もありませんし、私は永久歯に生え替わってから現在まで、一度もむし歯の治療をしたことかありません。歯科医なら当然? と思われるかもしれませんが、いままで私が歯のためにしていることは、歯科医をめざす以前からたった1つのことだけ。それはブラッシングです。
 でも、ブラッシングは誰でもやること。もし、ブラッシングをしてもむし歯ができてしまうのなら、それはブラッシングの方法に問題があるからなのです。
 みなさんの多くが実践している「バス法」といわれる磨き方は、先端の細いやわらかめのブラシで、細かく手を動かすやり方ですが、私のブラッシング法は、硬い歯ブラシで歯ぐきから歯の先端に向かって、歯の表面についた細菌をかき落とすように磨く「ローリング法」です。歯磨きをしないと、目の中の細菌が増えて目のなかがネバネバして気持ちが悪くなるので、私はこのブラッシング法で細菌を少なくしてきました。その結果、ごらんの通りむし歯はないので、シンプルなやり方ですが、みなさんにもおすすめできる磨き方だといえるのではないかと思います。
 むし歯や歯肉炎は、こじらせたかぜや結膜炎、中耳炎と同じように細菌感染で起こる病気。ブラッシングで細菌をかき落とすことがむし歯予防に何より大事です。
いまでは虫歯が1本もない私ですが、乳歯はむし歯だらけだったことを記憶しています。乳歯でむし歯をつくると永久歯になってもむし歯になりやすいのですか?とよく聞かれますが、私の例をとってみれば、それは正しい答えとはいえなそうです。赤ちゃんから幼児にむし歯ができやすいのは、母乳やミルク、スポーツドリンクやジュース、アイスやチョコなど甘いものをよくとるけれども、歯磨きが徹底しづらいからでしょう。
 私のところに患者さんとして来られる歯科医を見ますと、歯科医でもこの方法でブラッシングしている人はあまりいないようです。この歯科医たちが患者さんにしている歯磨き指導も、おそらくむし歯をつくってしまう方法だと思わずにはいられません。
◆痛くなる前に受診をする
 日常、歯科診療に当たっていて思うのは、むし歯や歯周病が相当悪くなってから、受診される方がとても多いということです。かなり痛みがひどくならなければ歯科に は行かないという方が多く、歯を抜かなければいけない状態のことも少なくありません。歯を抜くということは、ブリッジや入れ歯を入れなければいけないということです。あとからお話しますが、入れ歯はけっして心地好いものではありません。
 入れ歯に変わるべく登場したのが「インプラント」です。人工の歯根を植え込んで、もとの健康な歯に近い機能を回復させるインプラントは、歯科治療の世界では20世紀最大の進展といえるものです。
 こうして考えると、ブラッシングで口の中の健康、しいてはむし歯の予防が完全にできるなら、こんなに安上がりなことはないわけですし、むし歯になってしまったとしても、抜かなければいけないほど重症になる前に治療をすれば、歯は失わなくて済むということです。自分の歯は、失ってからは戻ることかありません。まずはそのことをよく理解していただきたいと思います。
◆歯ぐきや歯並びの悪い子は2人に1人
 学校の歯科検診に出かけて感じるのは、歯肉炎を起こしている子、歯並びの悪い子がとても多いということです。歯並びでいうと、治したほうがいいと思う子は約半数はいると感じます。歯科矯正には時間とお金がかかりますが、歯並びが悪いと外見の問題だけでなく、歯磨きがゆき届かず、歯周病になる可能性が高くなるし、なにより、きちんとかめないために一部の歯に負担がかかり、歯を劣化させてしまうことにもなります。
 一生のことを考えると、子どものうちに歯科矯正をするほうがよいのですが、日本では、それが欧米のようにまだ習慣的なものにはなっていません。歯並びは生まれつき決まっているものなので、もし悪ければ早いうちに矯正すること。それが、あとあとの歯科疾患を防ぐことにもつながります。
◆機能や美的な要素を考慮したさまざまな治療法がある
 もし現在、歯のことで何か悩みがあれば、躊躇せず、できるだけ早く歯科を受診することがたいせつです。歯はものをかむための重要なからだの組織です。この機能が十分に働かなくなれば、からだの健康そのものにも悪影響を及ぼします。本書のなかでも触れますが、むし歯をつくる細菌は、糖尿病など、一見無関係な病気を悪化させることがあるのです。事態を重くしないためには、早期の治療が必要なのです。また、 むし歯などがない場合でも、歯というのは多分に美的な要素が強く、もっときれいで白い歯だったらどんなにいいだろう、今までに治療した歯が美しくないので何とかしたいといった美容的な要望も、とくに女性では多いものです。歯科の最新技術では、こうした声にも応えられるようになってきました。
 本書では、ブラッシング法をはじめ、一般の歯科治療からインプラント、審美歯科の分野まで、歯の悩みを解決するための方法、あるいはヒントをたくさん盛り込みました。元気できれいな歯のために、お役立てください。
沢辺 治