親が子どもの歯の健康を守る時期

投稿者: | 2010年5月14日

 乳歯が生えそろい、6歳臼歯といわれる初めての永久歯(第一大臼歯)が生えるまでの幼児期は、よい歯を育てるための環境づくりのスタートの時期です。
 初めての歯が生後5~6か月で生え始め、2歳半頃までに合計20本の乳歯が生えそろいます。本書の冒頭の「はじめに」で、「乳歯のむし歯と永久歯のむし歯の因果関係はない」と述べましたが、もちろんむし歯になってよいことはひとつもありません。幼児から生え変わりの全盛期である小学校低学年ぐらいは、歯の健康を維持するためのブラッシングの仕方、おやつやジユースの与え方、ものをよくかむことを親子でいっしょに学ぶ大切な時期でもあります。
 そこでここでは、歯の生え始めから親知らず(知歯)が生えるまでの生え方の順番を示しながら、その時期に大切にしたい歯の健康のポイントについて述べてみようと思います。
◆1~2歳-歯の生え始めから離乳食完了まで
 生後5~6か月頃に下の前歯が生え始めます。早い子では3か月ぐらいから、遅い子では1歳半と、生え始めの時期にはとても個人差があります。
 まだ自分で歯を磨くこともうがいをすることもできませんから、歯が生えたら、清潔なガーゼを指に巻きつけて口の粘膜が傷つかないように歯をふいてあげましょう。
 上下4本ずつの歯が生えるのは、お誕生前後です。この頃から乳幼児用の歯ブラシで歯を磨いてあげましょう。歯ブラシはブラシの部分が小さめで、しっかり磨ける硬さのものを選びます。赤ちゃんの頭をひざにのせて仰向けに寝かせると、口の中がよく見えるので磨きやすいと思います。赤ちゃん用に柄の短い歯ブラシを持たせるのもいいでしょう。
 ブクブクうがいができるようになったら、離乳食のあとにさせて、口の中をきれいにする習慣をつけるといいですね。歯の成長にはカルシウム、ビタミンが必要となりますから、離乳食でもしっかりとり入れましょう。
◆2歳~就学前-乳歯が生えそろう時期
 乳歯はその後、だんだんと奥歯に向かって生えそろいます。20本すべて生えそろうのが2歳頃。乳歯のすき間はあいているのが普通ですから、歯並びを極端に気にする必要はありません。
 子ども用の歯ブラシで磨かせ、寝る前には仕上げ磨きをしてあげましょう。歯磨きが嫌いになっては困りますから、無理じいしないで、声をかけながら楽しく磨いてあげてください。食事やおやつのあとはブクブクうがいをさせましょう。
 乳歯のむし歯は、子どもに社会性が芽生える3歳頃から一気に増えます。2歳で3割の子に、5歳では9割の子にむし歯があります。親の目が届かないところでおやつやジュースを目にすることが大きな原因です。おやつは時間を決めて、食べ終わったらうがいを、1日1回は歯磨きをするといった生活習慣をつけるのがこの時期とても大切なことです。
 固いものをかむことは、歯にとってだけでなく、脳の血流をよくするためにも重要です。幼児期から少しずつ、小魚や繊維の多い野菜などを食事に取り入れるようにしましょう。
★舌小帯短縮症とは?
 舌の裏側にある帯状の膜を舌小帯といいます。かつてはこれが短いと舌を出そうとしたときにつれて前に出しにくいため、お乳の飲みが悪くなったり、将来発音に影響するといわれ、乳児期に切開していたことがありましたが、すでにお乳の飲みには影響しないことがわかっています。発育や発音に支障がある重症の場合は手術をします。歯並びへの影響としては、永久歯の側切歯が生えても中切歯との間に大きくすき間ある場合は手術を考えます。
◆6歳頃~小学校低学年-生え変わりの最盛期
 初めて生える永久歯は前歯から数えて6番目の第一大臼歯で、6歳臼歯と呼ばれます。場所は乳歯の奥。初めての歯は乳歯が生え変わるのではなく、乳歯の生えていなかったところに生えるのです。
 第一第臼歯は、歯の中でいちばんかむ力が強く、歯のくいしばりにとても重要な歯です。かみ合わせの形が複雑なうえ、生え始めから17~18か月と、生えるまでに時間がかかるので、むし歯になりやすい歯でもあります。また、歯の表面のエナメル質は、生えたときから強いのではなく、1~2年かけてだんだんと強くなっていきます。6歳頃では自分だけでは磨き残しがありますから、フッ素入り歯磨き剤を使って親が仕上げ磨きをしてあげましょう。
★乳歯がなかなか抜けないときには歯科へ
 小学校低学年は次から次に永久歯に生え変わる時期。前歯のない子が目立ちますよね。歯がグラグラしている状態は、もう歯の根がなくなっていますから、食事をしているときなどに抜けてしまうことがほとんどです。グラグラしたままなかなか抜けないときには、無理に引っ張ったり押したりしないで歯科を受診してください。大人の歯はもう歯の下にできていますから、乳歯がじゃまをして永久歯が変なところから出てくるのは困ります。
 自分でしっかり磨けるようになったら、大人と同じ磨き方を教えてあげましょう。もしむし歯を見つけたら、すぐに歯科へ。初期のむし歯は正しい治療で回復が可能です。かかりつけの歯医者さんを見つけられるといいですね。
◆小学校卒業ぐらいまで-大人の歯が完成する時期
 奥歯が次々と生え替わり、小学校を卒業する頃には、乳歯のいちばん奥の歯(第二乳臼歯)が生え替わります。そして、いちばん最初に生えた第一大臼歯のひとつ奥の歯(親知らずを除くといちばん奥の歯)である第二大臼歯が生えて、生え替わりは完了を迎えます。
 第二大臼歯はアゴの奥のほうに生えます。アゴの細い子は特に磨きにくいので、磨き方をよく見てあげましょう。
 学校健診では年に1度、歯の状態をみてくれますが、むし歯を見つけても放置していれば何の意味もありません。また、ごく初期のむし歯を見逃しても痛めば気づくので、むし歯を見つける意味としてはあまり重要ではありません。学校健診は、歯の健康状態を知り、歯のケアを見直すきっかけになるものと考えてほしいと思います。
 歯並びのことも気にかけてみてください。異常があれば、この時期から高校生ぐらいまでに治すのが賢明です。正しい歯並びをしているかをチェックして(4章参照)、異常があれば歯科で相談するようにしましょう。
◆中学・高校生の歯の成長とケア
 成長ホルモンの分泌が多く、親の手を離れて自分で歯の管理をするようになる思春期は、歯肉炎やむし歯になりやすい時期です。あとから歯を失うことになる人は、この時期にむし歯を多くつくっています。いままで気をつけてきたことを継続して、ときどき子どもの口の中をのぞいて見てあげられるといいと思います。
 なかには口の中の状態はきれいなのに、体質的に歯周病になりやすい人がいます。むし歯で歯が痛いという以外にも、冷たいものがしみるとか、グラグラする感じがすると子どもが訴えた場合は、歯科を受診させてください。
★親知らずについて
 「親知らず」は、無くてもかむ機能に支障はないので、異常なところに異常な状態で出てきているとわかったら抜いてしまいます。異常なところに生えるのは、現代人はアゴが細くなって、本来生えるスペースがなくなったためです。また、隣の歯に向かって斜めに生えると、くっつき合ったところに汚れがたまって歯周病になる可能性が高くなり、両方の歯を抜かなければならなくなることもあります。